相模女子大学 メディア情報学科

お知らせ

第40回メディアトーク「おかえり、日ペンの美子ちゃん―マンガ家・服部昇大トークショー」が開催されました

◎メディアトークが開催されました!

2018年10月20日、メディアに関わる方にお話を伺う“メディアトーク”が開催されました。本学の学生のみならず、外部から一般の方にも多数ご参加いただきました。足を運んでいただいた皆様、誠にありがとうございました!今回のトークショー、お楽しみいただけましたでしょうか。

 

さて、今回のメディアトークのキャッチコピーは『おかえり、日ペンの美子ちゃん!』。ゲストとしてお越しいただいたのは、現在六代目となるがくぶんボールペン習字講座の公式マンガ「日ペンの美子ちゃん」を執筆されている、マンガ家の服部昇大(はっとり しょうた)先生です。懐かしの少女漫画風の絵柄の方なので、大人しい印象の方だと思っていたのですが、背が高めでがっしりとした印象で、当日着ていらしたストリートファッションがとてもよく似合う方でした。聞き手を務めるのは、本学准教授でマンガ研究者である岩下朋世(いわした ほうせい)先生。服部先生、岩下先生のお二人は日本語ラップ好きであること、少女マンガに詳しいという共通点から交流があり、以前からのお知り合いであったそうです。普段の会話では専らラップの話になってしまうため、改めてマンガの話をしておこう、といったところから今回の企画が生まれたとのことです。気心の知れたお二人であるからこその和やかで楽しい雰囲気の中、様々なお話を伺うことが出来ました。

 

 

 

◎服部先生ってどんなマンガ家さん?

トークショー前半では、服部先生のこれまでのお仕事について、幅広くお話をしていただきました。まず上がったのは、webマンガサイト『スピネル』で現在連載中のマンガ、「邦画プレゼン女子高生 邦キチ!映子さん」(以下「邦キチ」)の話題でした。とある高校の「映画について語る若人の部」を舞台に洋画好きの部長と、唯一の部員で邦画が好きすぎる主人公・映子さんによって繰り広げられる“ディープな邦画”の紹介マンガです。特徴的なのは1970~1980年代の少女マンガ風の絵柄で描かれているところ。トークの中では絵柄の“元ネタ”等についてもお話があり、映子さんは陸奥A子先生、部長は山本鈴美香先生の絵柄を意識しているそうです。内容、キャストに関する映子さんの熱い語り口、それに少し引き気味な先輩、二人のイキイキとしたやりとりがたまらなく面白い作品です。

近年、すでに映画紹介マンガがその数を増やしていますが、服部先生が「邦キチ」を描く上で特に気を付けていることがあるといいます。それは、他とのネタ被りを避けつつ、「あくまで映画のプレゼンマンガであること」。他の作品はいわゆる“映画ファンあるある”が面白さになっているものも多いですが、この作品では、それよりも映画の中身の細かいところを紹介することを念頭に置いて描かれているのだそうです。

そんな「邦キチ」はその公開方法にも工夫がなされています。連載されている『スピネル』で公開するだけでなく、服部先生ご自身のツイッターでも全編が公開されているのです。このやり方は服部先生の発案で、「ツイッターで流れてくるとついつい読んでしまう」ことを狙っているのだと言います。どんなに面白い作品であったとしても、まずは人の目に触れる所に出し、より多くの人に読んでもらわなければ意味がない、というわけです。文末に『スピネル』と服部先生ご自身のツイッターアカウントのリンクを掲載してありますので、ぜひチェックしてみてください。

ユニークな目の付け所で映画を紹介する『邦キチ』の“芸風”の源流として岩下先生が話題にしたのが、服部先生がなんだか変(?!)なマンガをブログ形式の文章で紹介するweb連載『墓場の漫画Digger』です。ここで取り上げられたマンガ「猛魚」(原作・南條英樹/劇画・国友やすゆき/1979年/芳文社コミックス)もその内容の面白さに会場も大盛り上がり(http://digger.pico2culture.jp/article/64367807.html)。細かな部分にいれられる服部先生の軽快なツッコミは、『邦キチ』の部長を彷彿とさせます。

 

現在連載中の『邦キチ』の話題の後は、服部先生のデビューから現在にかけての作風の変化の過程についてお話しいただきました。

今では懐かしの少女マンガ風の作風で知られる服部先生ですが、自身の好きなヒップホップカルチャーを題材にした2004年のデビュー作「未来は俺等の手の中~J.P.STYLE GRAFFITI~」は、スタンダードなジャンプ型を踏襲した作風でした。転機となったのはご自身の読み切り三本目となる「マジカル極道あざみ」(2006)で、これが少女マンガ風の絵柄でのギャグマンガ第一作目です。丁度編集部が忙しい時期で、そのスキをついて発表に至ったのだとか…。その後、女児向けアニメをパロディした魔法少女もののギャグマンガ「魔法の料理 かおすキッチン」(2007~09年)を経て、現在の「日ペンの美子ちゃん」や「邦キチ」のような、少し現代ミックスされた懐かしの少女マンガ風の絵柄が確立されていきます。

懐かしの少女マンガの絵柄で繰り広げられるギャグマンガ、というユニークな作風なので、初めの頃は編集者にも中々理解を示してもらえず苦労も多かったそうです。

また、トークの中では服部先生の同人誌についても話題になりました。完全に趣味として活動されているのだというお話でしたが、読者の反応が作者に伝わってきやすく、気軽に様々な表現を試せる同人誌によって得られたものは、積極的に他の作品にも活かされているそうです。

 

 

◎おかえり!「日ペンの美子ちゃん」

そしてトークショー後半では、いよいよ本題である「日ペンの美子ちゃん」についてのお話へと突入します。

大学生の私と同年代の方は、もしかすると「日ペンの美子ちゃん」と聞いてもピンとこないかも知れません。かく言う私も、今回のこのメディアトークで初めて知りました(日本ペン字協会さま、服部先生、ごめんなさい)。というのも「日ペンの美子ちゃん」が主に活躍していたのは私たちの生まれる前、1970年代~1990年代頃のことなのです。親世代の女性に日ペンの美子ちゃんについて聞いてみると「勿論知ってるわ!」と少女のような笑顔で答えてくれるに違いありません。

長らく鳴りを潜めていた「日ペンの美子ちゃん」は、2017年にその活動を再開します。トークイベントでは、初代∼五代目美子ちゃんまでの歴史を六代目美子ちゃんの作者である服部先生と共に振り返っていきました。様々なマンガ家やイラストレーターが担当し、それぞれのカラーが出ている歴代の美子ちゃんについて、服部先生、岩下先生の解説や軽快なツッコミと共にお話を伺うことが出来ました。美子ちゃんの歴史について興味のある方は、詳しくは公式ホームページ(https://www.gakubun.net/pc/contents/shop/LP/static_3/mikolp_17/profile/)をご覧ください。

 

五代目の美子ちゃんの後十年程間が空いて六代目の美子ちゃんが復活したのですが、服部先生が担当されるに至った経緯は意外なものでした。

そのきっかけとは、服部先生が描いていた美子ちゃんのパロディマンガ、「日本語ラップの美ー子ちゃん」。日本語ラップを愛する美ー子ちゃんが“バイブス高め”に日本語ラップについて紹介していくマンガです。その美ー子ちゃんがSNS等で話題になっているさなか、服部先生のもとに日本ペン字協会から一通のメールが届きます。「ついに怒られるのでは?!」と怯える服部先生の心配とは裏腹に、会うことになった担当さんから持ち掛けられたのは、次の美子ちゃんについての相談事でした。初めは今風の絵柄の美子ちゃんを探している、というものでしたが、懐かしい絵柄の方がいいのでは、と提案したところ「では服部先生に…」と、まさかの展開で服部先生が六代目を担当することが決まりました。初めの作品が世に出るまでには一年かかりましたが、様々な工夫をなされ、「日ペンの美子ちゃん」は復活を果たしました。

 

現在、毎週水曜日に「日ペンの美子ちゃん」の公式ツイッターアカウントで公開されている美子ちゃんのマンガには、時事ネタがふんだんに取り扱われています。「SNSウケを狙い、話題にならなければしょうがない」と服部先生の提案から始まったそうです。その読みがいのある内容もあってか、通信講座の入会者数は三割も増えたそうで、効果は抜群です。

 

 

 

◎トークショーを終えて

今回のトークショーで私が特に興味深く感じたのは、服部先生が、マンガの内容は当然ながら売り出し方、発表方法も、ネットありきの社会になりつつあるこの時代に合わせたアプローチをとてもよく考え、試していらっしゃることです。読みがいがあり、次の話が楽しみになるような内容、メインとなる媒体で読みやすい表現、より多くの人の目に触れるような発表方法……試行錯誤の繰り返しで確立されていったものだと思うと、素直にすごいなと思いました。自ら働きかける、自分から動き始める、というところも服部先生の強みなのではないでしょうか。マンガの業界のみならずクリエイティブな仕事が様々移り変わっていくなかで、生き残るための努力、工夫を続けることが大切なのだと実感しました。

 

最後に改めまして、沢山の楽しくためになるお話を聞かせてくださった服部先生、岩下先生、そしてポスターのデザイン等事前の準備や当日の準備、片付けに協力してくれた学生のみなさん、そして何よりも、ご来場くださった皆様、ありがとうございました!

(メディア情報学科2年:高橋美里)

 

 

*「日ペンの美子ちゃん」は、この冬に六代目にして初の単行本化!元気いっぱいの美子ちゃんを是非お手元に。服部先生が美子ちゃんを描くきっかけとなった「日ポン語ラップの美ー子ちゃん」や、「邦キチ」とあわせてお楽しみください!!

 

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◎リンク

服部昇大先生Twitter:https://twitter.com/hattorixxx

 

マンガ、批評掲載

スピネル『邦画プレゼン女子高生 邦キチ!映子さん』:http://comip.jp/spinel/works/eiko/

墓場の漫画Digger:http://digger.pico2culture.jp/article/64367807.html

 

日ペン

日ペンの美子ちゃん公式ツイッター: https://twitter.com/nippen_mikochan

日ペンの美子ちゃん公式ホームページ:https://www.gakubun.net/pc/contents/shop/LP/static_3/mikolp_17/profile/